今月の花だより（2025年11月24日）
現在開花している植物
温室
イソフジ
奄美群島以南の南西諸島、沖縄、台湾、熱帯アジアの海岸に広く分布するマメ科の常緑低木。海岸の岩場に自生し、フジに似た花が咲くのでこの名がついたとされます。5月に薄紫色（藤色）の花が垂れ下がって咲くフジと違って、黄色の花が下から順番に立ち上がるように咲きます。写真は11月上旬に撮影したもの。長くゆっくり現在は上の方も花が開いています。
モンステラ（葉）
ネット遊具を降りると窓があるおもしろいカタチの葉っぱが見えます。観葉植物としておなじみ。現在開催中の 「え！うちのコが危ない？ペットに有害な植物展」に展示されているサトイモと同じサトイモ科の植物です。シュウ酸カルシウムという成分を含みます。サトイモを調理するとき手がかゆくなったりしませんか？あれはシュウ酸カルシウムの針状の結晶が皮膚にちくちく刺さって引き起こされます。シュウ酸カルシウムは加熱すると分解されます。今どきは電子レンジを使えば簡単につるんと皮がむけちゃいます。
ハマユウ（ハマオモト）葉
図鑑にハマユウとハマオモトの２つの名前があります。花が終わって、青々とした葉っぱをみていると、ハマオモト（浜万年青）という名前がしっくりくるような気がします。暖地の海岸に自生する海浜植物ですが、観葉植物としても美しいですね。秋の彼岸の頃に咲くヒガンバナと同じヒガンバナ科の植物。リコリンというゆるキャラみたいな名前のアルカロイド系の毒成分を含みます。ヒガンバナは里山周辺でよく見かけます。モグラやネズミから農作物を守るためと、デンプンを多く含み、飢饉の際、毒をぬいて食用とされた時代もあったそうです。
フンベルティ
温室のすみっこに小さな多肉植物を並べているコーナーがあります。通り過ぎると一瞬ですが、よく見ると、おもしろいカタチや名前の植物があり、花を咲かせているものもあります。こちらは、学名「Crassula humbertii」をそのままローマ字読みで「フンベルティ」の名で流通しています。南マダガスカル原産ベンケイソウ科クラッスラ属の多肉植物。茶色く見える葉はよく見ると斑入りで、星形の白い花がよく目立ち、コンパクトながらも見応えがあります。
ゴーラム（葉）
「宇宙の木」という別名を持つふしぎな多肉植物。ペットに有害な植物として紹介されているベンケイソウ科「フチベニベンケイ」（金のなる木）の枝変わり品種とされます。英名は「ET fingers（ETの指）」。アメリカのSF映画『E.T.』（1982年上映）の指をイメージしているそうです。そう聞くと、葉っぱとは思えないゴムのようなビニール素材のような葉先に指タッチしたくなりますね。成長はゆっくりで、花はめったに咲かないそうです。 どんな花が咲くんだろう？
グラスチューブ（つる性植物・鉢物のコーナー）
ハナキリン
マダガスカル原産トウダイグサ科ユーフォルビア属の多肉植物。ほぼ1年中花を咲かせています。クリスマスの頃出回るポインセチアの仲間です。こちらもペットに有害な植物なのだそうです。ペットに有毒なのは人にとっても有毒なものも多く、枝葉を切ると出る白い乳液は、化粧品の乳液と違って皮膚につくと、人によってはかぶれたり、炎症を引き起こします。万が一手についたらすぐに洗い流してください。
サンセベリア（葉）
マイナスイオンを放出し、空気清浄作用があるとされるおなじみの観葉植物。こちらもペットには有害な植物とありました。全草に「サポニン」という成分を含みます。サポニンはラテン語で石鹸を意味する「サポ」に由来。水に溶かすと泡立つ性質があります。サポニンを含む植物で「ムクロジ」やマメ科の「サイカチ」など「石鹸の木」という別名を持つものがあります。にほん昔話に出てくる川で洗濯をしていたおばあさんはこの植物の実や豆を泡立てて洗濯をしていたのかな？
展示庭園
ハマヒサカキ（中庭にて）
神様に捧げる「サカキ」、「ヒサカキ」の仲間で、暖地の海岸に自生する常緑小高木。こちらは神事というよりは、公園や道路沿いに生垣として利用されます。よく見るとツバキの花のミニチュア版のような小さな花を下向きに咲かせています。花はプロパンガスのニオイとよく似た独特の臭気があり、たくさん植えられているところで、ガスが漏れているという通報があったところが実際あったそうです。
ツワブキ（ふれあい園にて）
漢字で「石蕗」と書くように、海岸の岩場に自生するキク科の多年草。フキに似た丸い葉に初冬のやわらかい日が射して、葉っぱがつやつや美しいですね。黄色の明るい花は花の少ない時期の貴重な彩を与えてくれます。こちらもピロリジンアルカロイドという毒成分を含みますが、いわゆるアク抜きをすることによって、食用になります。キャラブキというフキの佃煮も地方によってはこの植物が使われます。
ソテツ（植物園入口）
ペットに有害な植物としても紹介されているソテツ。外のものはコモが巻かれ冬の備えが完了致しました。 こちらは「サイカシン」という毒成分を含みますが、でんぷん質も多くあります。鹿児島県奄美群島にソテツ味噌という調味料があります。玄米や大豆と一緒にソテツの実が使われ、水でさらしたり、発酵によって、ソテツの実に含まれる毒成分を分解したもので、おかずみそとして食されているそうです。おとなり石川県にもふぐの卵巣を塩と麹に3年間漬け込んで毒抜きをした発酵食品がありますが、発酵パワーってすごい！ですね。
担当者からひとこと
現在、2階ワークショップにて開催中の「え！うちのコが危ない？ペットに有害な植物展」にちなんで、ペットに有害な植物の図鑑に登場する展示植物をいくつかとりあげてみました。いわゆる「毒」というやつです。人間ファーストで考えると毒＝危険、怖い、何でそんな危ないものを植えとくんだ。切りなさい。とおっしゃられる方もおられるかもしれません。植物の立場に立ってみると、ほとんどの植物は何らかの毒成分を持っていて、動くことのできない彼らにとって、毒＝生きるための大切な成分ということになります。そして、私たち人類の長い歴史の中で、その成分を使って、毒殺された権力者もいましたが、時に薬として利用され、多くの命を救ったものも多々あります。人と植物と毒…奥が深いです。 注；ふつうに花を観賞したり、香りをかいだりする分には害はありません。