今月の花だより（2025年9月17日）
現在開花している植物
温室
クィーン・エマ・リリー
「暑さ寒さも彼岸まで」の彼岸が近くなって、温室の隅っこに暮らすヒガンバナ科の植物が開花しました。クイーン・エマはハワイの王様カメハメハ4世王妃Emma Rooke（1836-1885）のこと。彼女のお気に入りだったので、この名がついたとされます。リリー（ユリ）とつきますが、ユリ科ではなく、ヒガンバナ科の植物です。
ハイビスカス（フウリンブッソウゲ）
ハワイのハイビスカスとは雰囲気の異なるアフリカ東部ザンジバル島原産のハイビスカス。学名「Hibiscus schizopetalus」のschizopetalusは「切れ込みのある花」を意味します。サンゴに似た色や形から「コーラルハイビスカス」の別名があります。風が吹くと、風鈴のように揺れて咲く風雅なハイビスカスですね。
グラスチューブ（つる性植物・鉢物のコーナー）
サンセベリア（つぼみ）
「The 観葉植物」、サンセベリア。縞模様の葉っぱから「虎の尾」の別名もあります。マイナスイオンを放出し、空気清浄作用があるとされます。そう聞くと、近くで深呼吸したくなりますね。現在つぼみが見えます。ランの仲間ではありませんが、「チトセラン（千歳蘭）」の和名があり、つんつんした葉とは真逆のランのような甘い香りの美しい花が咲きます。
ドラゴンフルーツ（完熟途中の実）
グラスチューブのすみっこに暮らすドラゴンフルーツが3年ぶりに花を咲かせ、実をつけました。サボテンの仲間で、サンカクサボテン等の果実を中国名「火竜果」を訳して、ドラゴンフルーツと呼んでいます。夏の夜、葉を閉じて眠っている就眠運動中の植物の近くで、人知れず花を咲かせていたのですね。花は、月下美人によく似た美しい花です。
展示庭園
ハマカンゾウ(中庭にて）
浜に咲くカンゾウ。オレンジ色のユリみたいな花が目立ちます。野に咲く「ノカンゾウ」、「ヤブカンゾウ」。高原に行くと「ニッコウキスゲ」、「ユウスゲ」など、地方によっては固有種もあり、日本はカンゾウ大国なのですね。1日花なので、英名は「デイリリー」リリー（ユリ）とつきますが、こちらもユリ科ではなく、ワスレグサ科の植物。日本最古の歌集、万葉集にも「忘れ草」の名で、憂いを忘れさせてくれる花として登場します。
ミツバハマゴウ(中庭にて）
海浜植物の「ハマゴウ」とよく似ています。ハマゴウは這うように自生しますが、こちらは幹が立ち上がり、「タチハマゴウ」の別名もあります。南西諸島から沖縄の海岸の陸に近い場所、林縁に自生する落葉低木。当園は、中庭とふれあい園にも植栽しています。葉の裏が白い毛で覆われ、風が吹くと、シルバーリーフがきらきら美しいです。
ハマベノギク(中庭にて）
海岸に自生する野菊の仲間。中庭の一角に、薄紫色の大きな頭花をつけ、這うように茎をのばしています。海浜植物の図鑑には、富山県以西から九州にかけて自生とあります。氷見市の郷土資料、「氷見市史９資料編七自然環境」（平成11年3月発行）に1970年代に氷見市の海岸で撮影されたハマベノギクの写真があり、現在は見当たらないとありました。富山県のどこかの海岸に今でも咲いているのかな？
海浜散策園
ウンラン（松田江浜にて）
漢字で海のラン（蘭）と書きます。ランの仲間ではなく、オオバコ科の植物。写真はゆでたまごみたいですが、淡黄色のランのような可憐な花が夏の終わりのちょっと寂しい海岸を彩っています。
担当者からひとこと
現在温室前通路にて、夏のスケッチ展を開催しています。夏のあいだ来園頂いた方に描いていただいた思い思いのスケッチを展示しています。カブトムシやクワガタの絵が多く、上手に特徴がとらえてありますね。植物の絵は少数派ですが、ハイビスカスの絵を描いてくださった方も多く、夏！という感じです。この夏の高温多湿で病気になってしまったハイビスカスもありますが、それでも花を次々咲かせています。ハイビスカスの花言葉は「病気に打ち勝つ」ではありませんが、植物をじっと見ていると、花言葉を考えた人の気持ちがわかるような気がします。