今月の花だより（2025年6月1日）
現在開花している植物
温室
ガジュマル
緑が濃い季節、ガジュマルの葉もわさわさと繁ってきました。沖縄では精霊が宿る神聖な木とされます。「幸福の木」の名前で観葉植物として販売されたり、寄生植物といって、他の植物に着生し、気根という根をのばして、元の植物を枯らしてしまうことから「絞め殺しの木」という怖い別名があったり、いろんな表情を持つ植物。それだけ生命力が強いということなのですね。よく見ると、果物のイチジクを小さくしたようなかわいらしい花が見えます。
ハマユウ/ハマオモト
太平洋側の黒潮が流れる暖地に自生する海浜植物。花が神事に使うコウゾを裂いて作る白い布、木綿（ゆう）に似てハマユウ（浜木綿）、葉がオモト（万年青）に似て、ハマオモト（浜万年青）ともいいます。日本最古の歌集、万葉集に「み熊野の浦の浜木綿百恵（ももえ）なす心は思（も）へど直（ただ）に逢はぬかも」巻四（四九六）という歌があります。作者は柿本人麻呂（６６０～７２４）。み熊野は、現在の紀伊半島あたり、熊野灘のこと。古い時代から日本の海岸を彩ってきた植物なのですね。
キフゲットウ
今年は3年前に植栽したゲットウとゲットウの園芸品種で葉に黄色の斑が入るキフゲットウの花が急に覚醒したかのようにほぼすべての株が花を咲かせました。漢字で「月桃」。美しい名前です。月明かりの下で、花が桃のように見える幻想的な光景が目に浮かびます。実際は、台湾での呼び名の当て字とされます。抗菌作用があるとされる葉は、沖縄ではムーチ―（おもちのこと）を包んだり、お茶や虫よけなどハーブとして利用されます。
アデニウム（砂漠のバラ）
南アフリカ、アラビア半島原産のキョウチクトウ科の植物。塊根植物（かいこんしょくぶつ）=コーデックスといって、砂漠地帯を生きるため、根や幹がずんぐり大きくなっています。「砂漠のバラ」の別名のとおり、美しい花ですね。近年、砂漠ではなく、雨の多い東南アジアでも盛んに栽培されているそうです。
センペルビウム（クラクフ）～企画展、身近な多肉植物展より～
現在、温室内で身近な多肉植物展を開催しています。多肉植物と聞くと、アフリカや中米、メキシコなどの砂漠地帯の植物のイメージがありますが、センペルビウムはヨーロッパ中南部からコーカサス、中央ロシアにかけての山岳地帯に分布する多肉植物です。写真は多肉植物愛好家のタニラーさんが出展して下さったもので、「クラクフ」という品種。ポーランドにある都市の名前と同じ。何か関係があるのかな？
グラスチューブ（つる性植物・鉢物のコーナー）
コウシュンカズラ
熱帯アジアからオーストラリアの海岸やマングローブに広く自生する海浜植物。恒春は台湾の南端にある地名。 日本では、沖縄や先島諸島に自生、公園や生垣にも利用されます。世界共通の植物のお名前、学名「Tristellateia austlasiae」にある「トリステラテイア」は「三ツ星」の意味。星みたいな黄色の明るいお花ですね。
ゲンペイカズラ
白い萼（がく）と赤い花の対比が美しく、源平合戦の源氏と平家の旗の色に見立てて、この名がついたとされます。葉をもむと臭いにおいがすることから源平臭木（ゲンペイクサギ）の別名があります。
展示庭園
ハマボッス（中庭にて）
浜に咲いて、仏具のほっす（払子）に似ていることからこの名がついたとされます。払子はもともとは、不殺生（=仏教の世界でむやみに生き物を傷つけない）という教えにもとづいて虫を払うのに使われていたそうです。 サクラソウ科オカトラノオ属の2年草。輪になって花をつけていますが、この後、種ができます。こぼれ種でふえそうなつくりですね。
海浜散策園
ハマエンドウ（松田江浜にて）
松田江浜のハマエンドウ群落。海浜植物は基本、集団行動なのかな？ぼっちだと風に飛ばされたり、砂と一緒に流されたり、不安定ですしね。名前のとおり、エンドウ豆に似た豆ができているものもあります。こちらはエンドウの仲間ではなく、スィートピーの仲間になります。なので、エンドウに似た豆は食べない方がよさそうです。
ハマボウフウ（松田江浜にて）
薬用植物の防風に似て、浜に自生するのでこの名がついたとされます。若葉は刺身のつまや和え物など食用になり、栽培している地域もあります。根っこが長く、1メール以上地中深くまでのばします。一つ見つけると、横に直線上に歩いていくと、次々見つかります。砂浜にくいを打って、不安定な場所を安定させているような自生の仕方です。自然はうまくできているのですね。
コウボウシバ（松田江浜にて）
コウボウムギと同じカヤツリグサ科の海浜植物。小さいので、シバ（芝）がついたとされます。「三数性（さんすうせい）」という数学用語のような植物用語があり、カヤツリグサ科の植物は茎の断面が三角形だったり、葉っぱも三角、穂も三角と三角のパーツが多いです。植物の世界にも美しい数字の法則が存在するのかな？見かけたら観察してみてくださいね。
ハマヒルガオ（松田江浜にて）
日本の海岸で広く見られる海浜植物のひとつ。淡いピンクの花が潮風に揺れて、爽やかですね。湾岸道路のアスファルトの上にも咲いているのを見かけましたが、最高気温が30度越えの真夏日となった日を境に姿が見えなくなりました。植物も生きづらさを抱えている時代なのですね。
担当者からひとこと
松田江浜に自生する「ハマボウフウ」はセリ科の植物です。当園には、「ボタンボウフウ」や「アシタバ」という海浜植物も植栽しています。いずれも青汁に入っていたりします。パクチーや三つ葉、パセリ、セロリ、ニンジン‥私たちの身近にもセリ科の植物はたくさんあります。クセ強で苦手。とう方も多いかもしれませが、セリ科の植物は体に良さそうな植物が多いですね。